昨今の中国は、「尖閣は自国の領土」と主張し、実際に尖閣諸島周辺海域において公船を相次いで日本の領海に侵入させています。こういった不穏な動きを中国が見せる一方で、日中は密接な経済関係を維持してきました。
インバウンドや農林水産物の輸入に食い込む中国
観光を目的とした訪日外客数に占める中国人の割合は、平成29(2017)年が25.3%、平成30(2018)年が26.7%、平成31(令和元、2019)年が30.3%となっています。今年の2月以降はコロナの影響で中国人観光客の少ない状態が続いていたはずですが、コロナ禍が落ち着けばまた大量の中国人観光客が押し寄せるのではないでしょうか。
また、農林水産物の輸入総額に占める対中輸入の割合は、平成29(2017)年が12.9%、平成30(2018)年が12.9%、平成31(令和元、2019)年が12.5%となっています。
これらの数値の算出に日本人の観光客数や農林水産物の国内需要は含まれていません。よって、日本の観光業や日本国内で流通する農林水産物の正確な“中国依存度”は算出できません。しかし、いずれの分野にも無視できない量の“中国ウエイト”が含まれているのは間違いありません。
日本の安保方針転換で中国は経済制裁発動か
しかし、こういった“中国ウエイト”が中国側に利用されるとは考えられないでしょうか。今後、日本が安全保障の方向性を大きく転換し、それを中国が自国にとって不利と感じた場合には経済制裁を発動することが想定されます。
経済制裁の例としては、中国人の日本への渡航規制が考えられます。インバウンド全体のうち対中インバウンドが急に無くなれば、日本の観光業には大きな打撃となることが考えられます。実際に、韓国のTHAAD配備に対して中国政府が中国人の渡航を規制したという例が過去にありました。
また、農林水産物の対日輸出を止めることも考えられます。輸入農林水産物のうち対中輸入分が急に入ってこなくなった場合、日本の国内製造業や国民生活への影響が考えられます。こちらは中国側が市場を失うケースであることから対日輸出規制に踏み切る可能性は低いと考えられますが、全くの0%とも言えません。
日中の経済的結び付きが安全保障に与える影響
日本が自国にとって安全保障上重要な動き(改憲や関係法の整備)に踏み込もうとした場合、先述のような中国の反応が想定されます。
しかし、それに臆して、中国に「忖度」する安全保障では本末転倒です。
中国が日本にとり安全保障上の脅威となっている現状では、日中の経済的結び付きが日本の“国防の足枷”となっていないか見直すべきではないでしょうか。
(了)
主な参考元
日本政府観光局HP
「2017年 国籍別 / 目的別 訪日外客数 (確定値)」
URL(https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/)