【用語解説】北大西洋条約機構(NATO)

北大西洋条約機構(NATO)は、冷戦初期に西側陣営(資本主義陣営)で結成された軍事同盟です。

概要

冷戦初期の1949年、北米・欧州の西側陣営12か国は、ソ連の脅威をにらみ、軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)を結成。加盟国への武力攻撃が発生した場合に共同で防衛することを、定めました。このNATO結成は、当時米国が行っていた「対ソ封じ込め」政策の一環でした。その後も、1952年から1982年までに4か国がNATOに加盟しています。

一方、ソ連・欧州の東側陣営(社会主義陣営)8か国も、NATOに対抗するかたちで、1955年にワルシャワ条約機構(WTO)という軍事同盟をつくっています。

こうして、東西の軍事的な対峙構図は硬直化しました。

しかし90年代初頭になると、WTOは解散。NATOにとって脅威であったソ連も崩壊し、冷戦は終結を迎えることになりました。

冷戦終結後のNATOは、紛争防止や危機管理に活動の軸足を転換。欧州東部を中心に加盟国を増やし、その領域を拡大させました。

昨今の対露・対中関係

冷戦終結後のNATOとロシアの関係は、概ね良好な状態が続きましたが、その後再び対立が始まります。2014年には、ウクライナ共和国領であったクリミア自治共和国をロシアが一方的に併合。2019年には、米ソ(露)間で中距離核戦力の放棄を定めたINF全廃条約が失効しています。こういった不和が続き、NATOとロシアの関係は冷戦期の状態に戻りつつあります。

しかし、こうした中でNATOは地理的な弱点を抱えています。ロシアには、バルト海側にカリーニングラード州と言う飛び地が有ります。そして、NATO領域であるリトアニアとポーランドを挟み、東方向には親露国のベラルーシがあります。しかし、このカーリニングラードとベラルーシに挟まれたNATO領域(リトアニア-ポーランド国境付近)の幅は100km程度しかなく、有事の際にロシアがここを制圧すると、バルト三国への陸上経由の増援ができなくなる恐れがあります。NATOにとって言わばアキレス腱とも言えるこの地帯は「スバルキ(=ポーランド国境付近の地名)ギャップ」と呼ばれ、NATOとロシアの双方がこの地帯を意識した軍事演習を行っています。

また昨今は、中国が「一帯一路」で欧州進出に注力しており、2019年12月に行われたNATO首脳会議では中国の脅威が初めて議題に挙がっています。

NATO圏 スバルキ・ギャップと一帯一路

揺らぐ結束

NATO加盟国であるトルコは、ロシアから「S400」という地対空ミサイルシステムを購入することで同国と合意し、2019年から国内への機材搬入を開始しました。しかし、同じくNATO加盟国である米国は、NATOの機密情報がロシア側に流出する恐れがあるとして、トルコの「S400」導入に反発しています。

このほか、トルコはリビア問題をめぐって同じくNATO加盟国であるフランスとも対立しているうえ、トランプ米大統領とマクロン仏大統領も2019年12月に行われた会談後の記者対応で両者の溝を露呈させています。

ロシアや中国への対応を迫られるNATOですが、加盟国同士の結束は揺らいでいます。

(了)

主な参考元

日刊SPA!
「マケドニア加盟が示したNATOという最強の集団安全保障」
2019.2.26
グレンコ・アンドリー
URL(https://nikkan-spa.jp/plus/1553885)

「NATO 北大西洋条約機構の研究――米欧安全保障関係の軌跡」
防衛研究所図書館長・主任研究官 金子讓
(彩流社)

日経ビジネス電子版
「冷戦の再来、欧州で高まるロシアとNATOの緊張 プーチン訪日の真の狙いは?」
2016.9.29
在独ジャーナリスト 熊谷 徹
URL(https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/219486/092100020/?P=1)

時事ドットコム
「ロシア製ミサイルの稼働延期 コロナで経済打撃、米制裁回避模索―トルコ」
2020.5.6
URL(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020050500372&g=int)

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